タクシーを本業にしているドライバーの在職老齢年金受給乗務員が、働きすぎを止める理由(笑)

乗務員の給料

最近は乗務員の平均年齢が下がってきている様ですが、現在もタクシー業界を見渡すと、乗務員の高齢化がかなり進んでいると感じます。
実際、ニッセイ基礎研究所が2023年に行った調査によると、65歳以上のタクシー乗務員は全体の40%だった様で、ほゞほゞ2人に1人が年金世代という、他業種ではちょっと見ない構成になっています。

【年金をもらいながら働くと減る?・・・・在職老齢年金という制度】

65歳を過ぎて年金をもらいながら働く人が対象になるのが「在職老齢年金制度」です。
これは、年金と給与の合計が一定額(基準額)を超えると、年金の一部がカットされるという制度です。

この「基準額」は年々少しずつ引き上げられていて、2022年3月までは47万円 → 2023年4月に48万円 → 2024年4月に50万円 → そして2025年4月からは51万円になります。

つまり、月の給与と年金の合計が51万円を超えると、超えた分の半分ずつが年金から減らされる仕組みです。(苦笑)

【実際に計算してみる】

たとえば、タクシーの給与が月50万円で、年金が14万円ある人を想定してみます。

👉 合計は 64万円
基準の51万円を13万円オーバーしています。

この「超えた分の半分」が年金カットになります。
(50 + 14 − 51) × ½ = 6.5万円

つまり、年金のうち月6万5千円がカットされ、年間だと 6.5万円 × 12 = 約78万円の年金カット計算です。

年金の支給額が月14万円なら、実際にもらえるのは 14 − 6.5 = 7.5万円/月減額され、年ベースで言えば、168万円の年金が約90万円減って72万円になるイメージです。😱

【「カット」と言うより「戻ってこない分」】

「支給停止」と聞くと、後でまとめて支給されるように思う方もいますが、残念ながら後から戻ってくることは一切ありません。😱
つまり、「停止」というより「減額」や「年金カット」と言った方が実態に近い様です。

【年金を全額もらいたいなら、営収を抑える?】

この制度があるために、65歳以上の乗務員の多くは月の営収を意識的に抑える傾向があります。
年金がカットされるくらいなら、「そこまで働かなくてもいいか」というわけです。

仮に月給35万円(歩率60%)だと、営収は約58万円。
年金を合わせても・・・・給与35万円+年金14万円>51万円となるので、ギリ収まる範囲です。

つまり、「年金を減らされたくないから、わざと稼ぎすぎない」という現象が起きているんです。
なんとも皮肉な話ですが、働きすぎると損をする制度ってどうなんでしょうネ笑)

【生業としてのタクシーと、年金併用タクシーの違い】

ここでちょっと全国データを見てみます。


令和5年度の国交省の調査によると、全国の法人タクシー乗務員は231,938人。そのうち65歳以上は40%の92,775人

残りの139,163人が、いわゆる「タクシーで生計を立てている層」です。

全国平均の年収は4,189,900円なので、全乗務員で掛け算すると→ 総年収 9,717億円ほどになります。

ここから年金受給者層の「稼ぎ分」を引くと・・・・タクシー乗務員だけで生計を経ている人の年収hは約534万円/年となり、月で言えば支給45万円、手取り36万円前後が目安です。

【数字が示す分岐点】

つまり、同じタクシーに乗っていても乗務員には、実際には「年金+副収入型」と「生業一本型」の2つの層が存在しているということになります。

政府や業界紙が発表する「平均年収」には、年金で生活を補っている人も含まれているので、
本業としてのタクシー収入を見誤ることになります。

今回の試算(数字遊び?笑)で見えてくるのは、タクシー乗務員の平均年収をそのまま「生業収入」と考えるのは少し違う、という点です。👌


【まとめ】

給料+年金が48万円(2025年から51万円)を超えると、超えた分の半分が年金カット。

  • カットされた分は後から支給されない。
  • 年金を満額もらいたい65歳以上の乗務員は、稼ぎすぎないよう営収を抑える傾向。
  • 結果として、「タクシーで食べている層」と「年金を頼りにする層」で収入構造が大きく異なる。

タクシーという仕事は、稼げるかどうか以前に、**「どこまで稼ぐか」**が問われる稀有な職業です。
年金が「働き方のブレーキ」になっているというのも、なんとも日本らしい話ですよね(笑)😉